練習帰りに寄ったコンビニでがぼーっとレジの前で突っ立っているのを見て、コイツなにやってんだとの見つめる先に視線を移してみると、そこにはでかでかと天井から吊されたポスターがあった。それにはクマクマフェアというポップな文字が綴られていて、隣には熊だが猫だかわからないようなイラストが描いてあっていかにも女子が好きそうなキャラクターだと感じた。「……いいな」と独り言を呟いたの腕を引っ張って、「んなところに立ってたら通行の邪魔だろ」と言うとは俺の名前を口にし、驚いた表情を浮かべた。 「部活帰り?」 「ああ。お前は?」 「…暇つぶし」 「だろうな」 ひどいと言いながら頬を膨らますに、ふと笑みが零れる。何もしてなくてもかわいいやつがそんなかわいらしい仕草をしてどうすんだ。のちょっとした言葉や仕草に一々そんなことをポツリと考える俺は既に末期で、手遅れだ。 「日曜なのに大変だね」 「そうでもねぇよ。新しい必殺技を完成させるためには、練習が必要だからな」 「頑張ってるね染岡」 「おうよ」 何かをハッと思い出したように「あ、」と声を漏らしたは、手にぶら下げていた袋の中身を確認すると「アイス溶けてる…」としゅんとした声で言う。一体コイツはいつからあそこで突っ立っていたんだろうと気になりはしたものの、きっとは「わからない」と首を横に振るうだけだと思い、やめておいた。ハアと大袈裟な溜め息をついたあと、「新しいの買ってやるよ」と言うとは「い、いいよ」と首を縦には振らない。それもわかりきっていたことで、すぐ傍にあったアイスボックスの中に手を突っ込んで、アイスを手に取るとそのままレジへと向かった。いらない、いらないって!と本格的に抗議するは無視したまま、精算を済ませると、の腕を掴んで出口に向かった。 「…いいって言ったのに」 「安心しろ。俺も食うからよ」 その言葉に目を丸くしたに、きっと何か勘違いしてんだろうなと思いながら少しの間観察していると、「う、うん」ともじもじしながら何度も首を縦に振った。だからなんでそうお前はやること成すこと一々かわいいんだよ。胸がぎゅっと締め付けられる感覚を無視して、購入した包装からアイスを取り出すと、力いっぱい真っ二つにした。 「ほら」 「え、あ、なんだそっか、うん、パピコ、…ありがとう」 ちゅうちゅうとパピコを吸うはまるで小動物のようで、そんなことを恥じらいもなく思い浮かべる俺は、完全にに毒されていた。でもそれも悪くないと思えるのは、隣でが幸せそうに微笑んでいるからなんだろうな。 ベリーの余毒 執筆:20100701 公開:20100720 |