# 禍を転じて福と為す 「ちょ、えええ!?なにその足!」 おはよう、といつもと同じように教室へ入ったら、驚いたみんなの顔がわたしの目の前にズラーっと横に並んだ。わたしを見た京子ちゃんや黒川ちゃんが急いで駆けつけてくれて、心配そうな目でわたしを見つめてくれる。そのあとに、ツナや山本たちがわたしの周りに集まってくる。わたしはその光景を見ながら、もう一度「おはよう、みんな」と言った。そうしたらツナに、「なにがおはようなんだよ!」と訳もなく怒鳴られてしまった。ああ、せっかく人が気持ちの良い朝を迎えようと思ったのに。ツナのせいで台無しじゃあないか。そんなことを思いながら、よいしょ、と松葉杖を両方とも右手に束ねた。 「ちゃん、足骨折したの!?」 「あはは京子ちゃん。骨折しちゃった」 「ははっ。骨折したのにお気楽なのな!」 「あはは山本。そうなんだよ結構お気楽なんだよ」 山本とのほほんと話していると、ツナが青ざめた顔でこちらを見ているのに気がついた。ツナににこりと笑いかければ、ツナはもっと真っ青になってしまって倒れてしまうんじゃないかってくらい顔色を悪くさせた。ツナももしかしたら具合が悪いのかもしれない。そう思ってわたしは「大丈夫」と声をかけてみた。すると、「大丈夫じゃないだろ!」と大きな声で返事を返された。なんで怒っているんだろうと考えながら、右手に持っていた松葉杖を両方に持ち一歩一歩進み始める。京子ちゃんや黒川ちゃんが親切に荷物を持ってくれる。こうゆうときって、すごく女友達の有難さが身にしみる。わたしは思わず、ありがとうと呟いた。 「、お前いつこんな骨折なんて・・・」 「ん?ああ、昨日の夜。ビリーやりながら階段上ってたら、足挫いてそのまま落ちたの」 「ば、馬鹿だろお前!大体いつも言ってるだろ!よそ見するなって・・・」 「もうツナは心配性だなあ。大丈夫だってこれくらい。2ヶ月くらいで治るよきっと」 「なんでそんな曖昧なんだよ・・・しかも2ヶ月って」 「それよりツナも顔色悪いみたい。大丈夫?」 ツナの盛大なため息のあとに、大丈夫だよという優しい声が聞こえた。わたしは安心してほっと胸をなでおろすと、重たいカバンの中身を大雑把に取り出して、机の中へ移動させた。ふと顔を上にやって時間割表を見てみると、そこには数字の数に学校の学という二文字が並んでいた。ああ、今日は数学があるんだ嫌だなあ。なんてことを考えていたら、無意識にも小さなため息が漏れた。「」不意に隣に座っているツナに名前を呼ばれた。少し驚いて横を向くと、なにやら真剣な様子で何かを考えているツナの姿が目に入った。不覚にも少しかっこいいなあなんて思ったわたしのこの目は、きっと今日は調子が悪いのだろう。いや、そうであってほしい。でも、それを裏付けるように少しずつ心臓の音が大きくなる。わたし、ドキドキしている。 「うんとさ、オレ朝とか放課後とかできるだけと一緒に帰る」 「え?なんで。いいよ別にわたし歩くの遅いし」 「いいから。お前のこと放っておけないんだよ」 「え?あ、でも・・・」 「朝はもしかしたら遅刻するかもしれないけど、迎えに行くから」 「あ、だから・・・」 「大丈夫。ちゃんと迎えに行くし、送ってくし」 「じゃなくて、母さんが・・・迎えに来てくれるし」 「(ズコー)そ、そうゆう事早目に言えって・・・」 「あ!でも、やっぱあれ。母さん無理だ」 「どっちなんだよ!」 「だってあれだから無理で。だから、だから、ツ、ツナがいい。ツナと一緒に帰りたい」 「な、なんだよ急に」 「いいでしょ、いつも急なんだから」 「それもそうだけど」 「だから、うんと、朝と放課後迷惑かけちゃうけど、よろしく・・・してもいい?」 ツナがにこって笑った。うんって頷いたように、わたしの顔を見て。わたしはとてつもなく胸がきゅんとなってしまって、これから5分間ツナの顔をまともに見ることができなくなってしまった。ツナが朝、迎えに来てくれるって。放課後、わたしを送っていってくれるって。それだけ聞いただけでも、骨折してよかったなあと心から思った(てゆうか、一回骨折してみたかったの。だって、なんか松葉杖ってかっこいいもん。)。母さんには昼休み、メールで今日迎えに来なくていいって言わなきゃ。だって、男の子らしくなったツナがわたしをエスコートしてくれるんだから。 Fin. |