# 狼狽ブルース 今日も一日疲れた。この暑さのなか並盛町をただひたすら歩き回ったせいでもあるけど、それよか一番身体が堪えたのは城島犬のワガママだ。どうして、まあ、あんなにもキャンキャンワガママが言えるのか、わたしの中での素朴な疑問であったりする。駄菓子屋の前を通り過ぎれば、「あれが欲しい!」「これが食いたい!」と駄々をこねてわたしと千種を困らせて。とあるゲームセンターの前を横切れば、「あれがしたい!」「これがしたい!」とキャンキャン吠えて。ふう。全く、迷惑にもほどがある。骸さんに言いつけてやろうとか、思ったくらいだ。本当、マジで。・・・でも、そうしなかったのはやっぱり犬が弟みたいで可愛かったからなのかなー、とか考えてみたりする。・・・いや、しかしそれはないか。あんな弟、うるさすぎて却下だ。もっと可愛げのある、例えばボンゴレ10代目みたいなタイプは弟として欲しいのかもしれない。わたしの個人的な意見だけれど。 「ふぁあ」 不意にあくびがこぼれた。やはり、今日はお疲れモードらしい。わたしは重たい身体を動かしてすぐさま、電気を消してベッドに寝転がった。クーラーは、骸さんからあまり身体によくないから寝る前は付けてはいけません、と言われていたから電源を切る。でも、あつい。切るとあついし、付けると少し寒い。ちょうどいい温度が、なかなか見つからない。明日、小さめのやっすい扇風機を買ってくるか。と、そんなことを考えながらわたしはうとうとし始めた。明日も並盛町を探検だからそろそろ寝よう、そう思って瞼を閉じる。もう少しで、眠りそう。・・・そんなとき。わたしの部屋の扉が、ゆっくり、ゆっくり、開いてくるのが気配でわかった。少しビクリとしたが、もしかしたら骸さんが、クーラーを付けっぱなしにしていないか、点検に来てくれたのかもしれない。そう思って、わたしはまた重たい瞼を閉じた。すると、遠くの方から、はあーはあーと乱れた息遣いが聞こえてくるのが、なんとなく寝ぼけていたけどわかった。なんなんだろう、と回転の悪い頭でぼんやりと考えた。 「・・・」 ごそごそ。わたしの布団の中が、急にソワソワしだした。寝ぼけていたわたしもさすがに、バッと目を見開く。誰かが、誰かが、わたしの布団の中に侵入してきている!慌てて、覆いかぶさっていた布団を剥ぎ取って、すばやく電気を付けるとそこには弟にしたくない城島犬の姿が、あった。まぶしそうに目を細める犬は、「なんで起きるびょん!」とワケのわからないことを言った。気づけば、犬の頭を一発殴っていた。 「キャイン!」 「けーん・・・!アンタ、何するつもりだった?返答次第ではわたし、ただじゃおかないから!」 「ひれーびょん!夜這いしに来ただけらびょん!」 「死ね!アンタなんかのぼせて死んでしまえ!」 怒鳴っているのにも関わらず、犬は反省の色は一切見せず、懲りずにわたしの布団の中へ再び潜った。「ちょっと、何するのよ!」覆い被さっている布団を剥がそうとしても、犬がそうさせてくれない。中で「のいい匂いがするびょん!俺、ここで寝る!」と、叫んでいるのが聞こえる。色々と犬に腹が立ったわたしは、これでもかってくらいの力を注いで犬のいる布団を投げ飛ばした。すると、そこには息遣いの荒い犬がひょこんと座っていた。 「な、何するびょん!」 「そっちが何するのよ!そして、もう一回聞くけどアンタ何しにきたのよ!」 「だから、を夜這いしに来たって言ってるれしょーが!」 「アンタさあ!夜這いって意味わかってる!?わかってんのか!」 「もちろん!夜這いとは、夜、恋人のもとへ忍んで通うこと。特に、男が女の寝所に忍び入って情を通じること。だびょん」 「な、なんでそんな詳しいのよ・・・!」 「さっきパソコンで調べたびょん」 「一々そんなことしなくていいの!それより!早く出てって!」 「嫌れすー!今日はここに寝るんれすー!」 「ワガママ言うな!わたしの部屋よここは!」 「を襲いに来たのに、これらー意味ないびょん!」 「お、おそ・・・!で、出てけーーー!!」 そこら辺にあるものを次々と、犬に向かって投げた。でも犬は、相変わらずわたしの布団に包まって、出てこようとしない(てゆうか、わたしの布団をいつの間に自分の手元に・・・!)。遂に投げるものがなくなってしまったわたしは、疲れきってその場にしゃがみこんだ。しつこいヤロウだとは思っていたけれど、ここまで来ると、わたしがあきらめるに終えない。悔しいけど、今日の疲れがピークに達してしまった。 「、あきらめるびょん。ほら、来い」 「いやよ。わたし、今日は千種の部屋に泊まるわ」 「ちょ!待つびょん!千種も狼だっつーの!」 「お前はモノホンだろうが!」 「!行ったら食われるびょん!性的な意味で!」 「最後の付け足しみたいなのいらない!もう嫌!寝たいのわたしは!」 「ね、ねたい!?だったら今すぐ抱いてやるびょん!」 「意味がちげーって言ってんだろうがこのスケベ狼!」 次の日、骸さんと千種がひどい顔をしてわたしたちを睨みつけたのは、言うまでもない。・・・ごめんなさい、骸さん、千種。 Fin. |