しあわせのベルセルク


ああ、どうしたものだろうか、この愛らしさ。

「だーかーらー!ついて来ないでって、言ってるじゃない!お兄ちゃんのばか!」

顔を真っ赤に染めて、生意気な口を叩いたに衝動的に抱きついてしまいたくなった。だが、そんな激しい感情を表に出すことなく、僕は平然として、妹であるの目の前に立つ。先ほどから、がぐちぐちと文句を言っているのは一体何が原因なのか、兄である僕には全く理解できないんだけど、まあそこはそれほど重要じゃあない。どこが重要なのかは、僕の目になってみれば一目瞭然にわかることだ。この僕の妹である、の愛らしさ、だ。ここが一番重要なんだ。(はい、ここ来週のテストに出るよ。)まあ、僕みたいな洞察力を極めたものにしかのこの仕草ひとつひとつの意味を理解することは到底不可能だと思うけど、(例えば怒った時、必ず両腕をブンブン回す素振りを見せるのは、もっとお兄ちゃんに構ってほしいときだ。)そこらへんに群がる草食動物にもわかることがひとつだけある。それは、がどれだけ可愛くて、どのくらい魅力的な女の子なのか。これくらいならそこに歩いている、冴えない君でもわかるだろう。

、前にも言っただろ。僕は君の兄としての、義務を果たさなくちゃいけないって」
「義務って、朝こうやって手繋いで学校行くことなの!?そんなの、中学1年生にもなって恥ずかしいよ!」
「中学1年生だから、だよ。まだまだはピカピカの1年生なんだから、お兄ちゃんと手を繋いで登校するっていう校則があるんだ」
「そんな校則ないってせんせーが言ってたもん!それに、お兄ちゃんとこうしてるとクラスの友達にからかわれるの!もうヤダよ!」

が息を切らしながら吐いた言葉を僕は一瞬見逃すところだった。(からかわれる・・・だと・・・?)この言葉を聞いたとき、僕の身体的機能は強制的にストップし、そして、そのキーワードが僕の頭の中をウイイイイイイン!ウイイイイイイイイイイイン!ウイイイイイイン!と音を立てながら、超高速スピードで駆け回る。「〜雲雀恭弥(兄)の思考回路〜」→からかわれる=草食動物(♂)がに言い寄る=草食動物(♂)は本能的にに交尾を申し込む=その結果草食動物(♂)は凶暴な肉食動物(♂)へと変化を遂げ、はその後お持ち帰りぃ〜!する=が一生癒えぬ大きな傷を負うことになる。「〜雲雀恭弥(兄)の思考回路終了〜」・・・・・よし、こうなる前に噛み殺す。僕は今日のクラスへ行き、教室にいるすべての草食動物(♂)を根絶やしにする!僕はそう、決めた!

「お、お兄ちゃん・・・?わたしの話、聞いて、る・・・?」
「わかった。もう心配しなくても大丈夫だよ。僕が一匹残らず始末してあげるからね」
「え?あの、お兄ちゃん?話が全く見えてこないんだけど・・・。始末って、一体?」
「大丈夫。は何も心配しなくてもいい、ただ待っているだけでいいんだ。お兄ちゃんが全員を噛み・・・いや、やっつけてあげるから」
「やっつけるって一体何を!?わたし、何かお兄ちゃんに言ったかな!?」

があたふたしている姿を見て僕は、なんてこの子は優しいのだろう・・・!と目を手で覆いながら思った。「え!?どうしてお兄ちゃん泣いてるの!?」自分が危険に犯されつつあることを知りはしないとはいえ、ここまで他人を思いやれる気持ちを持っているなんて。「わたし、今の状況がイマイチよくわかんない!飲み込めてない!」我ながら良い妹を持ったと思った。そしてそれと同時にここまで追い詰めた草食動物(♂)共が憎くて、憎くて、たまらなくなった。「お、お兄ちゃん!?手に持ってるその黒い棒はなに!?なんかこわいよ!?」の無邪気な笑顔を見ていると、より一層この憎しみが増大して、居ても立ってもいられなくなった僕は、衝動に駆られ一歩ずつ一歩ずつ確実に学校へ向かった。「あの、お兄ちゃーん!ちょ、っと待ってえ!わたし一人置いていかないで!それから、わたし一人で喋ってるみたいだから、何か一言くらい返事してえ!」ああ、愛しの妹よ。これもそれもすべて、君のため。

に手を出す奴は・・・僕が必ず噛み殺す」


次の日、ことを終えた僕が妹であるから「お兄ちゃんなんてだいっきらい!ぼうりょく、するなんて、さいてえ!クラスのみんなにあやまってよっ!」と泣きながら頼まれたのはまた別の話だ。(ごめんね、。君の泣き顔なんて見たくなかったんだ。だけど、これもを守るための兄としての義務なんだよ。)




*Thanks you for..... 桑山葵さま