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ギラギラと照り付ける太陽の下で、黄色いボールが行ったり来たり慌ただしく飛び交う。夏特有のむわっとした暑さにうんざりしながら、わたしは木陰で休憩をとっていた。木々に囲まれたこの場所はほんの少しだけだけれど、涼しさが感じられる。 ここからそう遠くない所で芥川の「マジマジすっげぇー!今のもいっかい!」という元気な声がよく響いて、思わずふっと頬が緩む。青と白のパラソルの下で同じく休憩をとっていた跡部は、「…あのバカが」と溜め息をつきながらも、その表情は柔らかくてどこか優しかった。 ![]() 全国大会が間近に迫った七月下旬、青学、氷帝、立海、四天宝寺を含めた四校での合同強化合宿が催された。 この企画を発案、実行したのはもちろんわたしたち「氷帝学園」である。―――と言っても、わたしや部員たちがこのことを知ったのは、合宿が始まるわずか一週間前のこと。仕業は言わずとも某お坊ちゃまと某セレブ教師の手に負えないタッグである。この二人が協力したおかげで合同合宿が実現した、そうで。 その事実があるためか、跡部の態度がいつもに増してでかい気がする。(ただ単に空気が読めていないだけかもしれないけど)だってほら、みんなが頑張って練習に励んでいる中、ストライプのパラソルの下で優雅に休憩って。どんな神経しているんだろう。跡部の空間だけがまるで南の島国のようにわたしには映る。 「で、テメーはいつまでそこに居座っているつもりだ、アーン」 「ごめん、跡部だけには言われたくない」 「ハッ、俺様は試合待ちしているだけで、お前みたいにサボってるわけじゃねぇ」 「ハッ、生憎だけどわたしだって洗濯機待ちしているだけで、決してサボっているわけじゃない!」 「…ならさっき青学のマネージャーがお前を探していたのは何故だろうな」 「…………………ごめんなさい」 ブルーのトロピカルなジュースを片手に足を組む跡部はやっぱり様になっていて、ファンの子たちがいたらどうなっていただろうといらぬ想像をした。 跡部に嘘を見破られてしまったわたしは素直に謝ったのはいいものの、その後に小さい舌打ちをしたせいで、跡部のゲンコツを喰らう羽目になった。「いたい…」と涙目になりながら頭を摩っていると、跡部は「自業自得だ」と鼻を鳴らした。嗚呼、どうせ嘘をつくならもっとこう病的なことを言っておくべきだったと、頭を撫でながら後悔を噛み締めた。 「フン、働きますよ、働けばいいんでしょ」 厭味たらしくそう吐き捨てて、重たい腰をよいしょと持ち上げる。跡部が不意に発した「年寄りくせぇ」という台詞は全力で素通りだ。 視線を上げれば相も変わらずギラギラと地面を照り付けている太陽が、目に焼き付いた。眩しいと目を細めながら、遠くのコートで練習に励むみんなが蜃気楼のようにむわむわと揺れて、わたしは思わず溜め息を零した。暑い、兎にも角にもだ。 けれどいい加減甘えてばかりもいられない。わたしがサボるということは他校のマネージャーに迷惑がかかるということだ。それはなんとしても避けたい。頑なに動かなかった足を引きずって、太陽光を浴びる。もう、あの場所へは戻れない。 「なまえ」 振り向くと跡部が指をくいくいと動かして「こっちへ来い」と言う。わたしはいかにも嫌そうな顔をして、えーと駄々をこねながら渋々跡部のもとへ寄った。 「…なにさ」不機嫌な調子で口を尖らせる。跡部はわたしの餓鬼みたいな行為を気にすることなく、じっとわたしを見つめる。さっきとは違う跡部の真面目な表情に一瞬たじろぐ。 「お前甘い物好きだったな」 「う、うん…それがなに?」 跡部はハァと短く溜め息を零した後「やはりか…」と独り言を呟いて頭を抱えた。意味のわからない跡部の行動にハテナがいくつも浮かんで、首を傾げる。どうしちゃったんだ、跡部。 奇異な視線を注いでいると、跡部は生き返ったように「なまえ、よく聞いとけ」とわたしの腕を引っ張った。予想以上に綺麗な顔が近くにあって、内心ドキドキが鳴り止まなかった。 「知らねぇ奴が声掛けてきてものこのこ付いてくんじゃねぇぞ。菓子をもらってもだ。わかったな?」 「……は?」 「………一度で理解しやがれ、バカ」 額に手をやって、やれやれと首を振る跡部は相変わらず綺麗で、そんでもってわたしの腕をがっしりと掴んだままだ。汗ばんできた腕をいい加減離してくれればいいのにと思いながら、跡部の言葉を復唱した。知らない人に付いていくな。お菓子をもらっても付いていくな。………ん?ってことはお菓子はもらっていいの?そう跡部に聞いたら、本気で呆れられた。 「おいバカ」 「いやいやなまえっていう可愛い名前があるから!バカが名前みたいになってんじゃん」 「いいから聞いとけバカ」 「……ぐれるぞセンター分け」 口を尖らせ可愛らしい悪口を言うと、跡部はわたしの頭をくしゃくしゃと撫ではじめた。わたしは「止めろー!」と声を張るけれど、跡部は容赦なく掻き乱して、わたしの頭は見るも無残なものに変貌した。 「俺様が心配してやってんだ、素直に聞いとけ」 わたしの額を人差し指でコツンと小突いた跡部に、髪の毛も直さないまま仕方なくうんと首を立てに振ると、跡部は満足そうな笑みを浮かべた。 そして突発的に某セレブ教師のポーズを取った。 「フン、行ってよし」 「いやお前の持ちネタじゃねぇだろ 」 加筆:20100406 |